愛の心理戦争
「あんた、どうしたの今朝は」
「ウーン、何が・・・(ドキッ)・・・」
「朝からソワソワしているのじゃないの」
「おいおい、何考えているんだよ。今日は出社したとたんに会議で、その後も一日中会議の予定だよ。ウキウキしている暇なんてないよ・・・(いつもは寝ぼけた牛のような女なのにこういう時の動物的嗅覚だけは凄いな)・・・」
「あんた、私はソワソワって言ったのよ。ウキウキなんて言っていないわよ。
なおさら怪しいわねえ」
「おいおい、ソワソワもウキウキも大してかわらないだろう。俺は疲れているんだから・・・(本当に油断がならない女だな。刑事になればよかったのに)・・・」
「あらあら、疲れたなんて言いながらそのネクタイどうしたの。私そんな派手なネクタイ買ってあげたからしら」
「いやー、珍しいなあ、お前さんが俺のファッションを気にとめてくれるなんて。本人に忘れられちゃこまるな。昔、誕生日に買ってもらったネクタイだぜ。・・・(どうしたんだ、こんな日に限ってやたら細かいことに気がつくなあ)・・・」
「あんた、もしかしてそれで若作りしたつもりなの。それにファッションセンスが20年は遅れているわね。今時、ストライプのワイシャツに水玉模様のネクタイなんて流行らないわよ」
「ほっとけよ。俺が満足しているんだから・・・(そう言われればそうかもな。しかしこいつは若い連中のレトロ趣味なんて知りゃしないだろう・・・)
「まあ、そんな派手なファッションでも馬子にも衣装っていうから。それに世の中、今はアンティーク趣味っていうのも流行っているからあんたにはお似合いかもしれないわね」
「言うことにこと欠いて、今度はアンティーク趣味かよ。お前さんの憎まれ口にも慣れちゃったけれどな・・・(鋭い! それにしてもこんな若い俺を骨董扱いかよ)・・・」
「それで帰りは何時になるの」
「会議の結果次第だなあ。今日の会議は専務も出席するというから、夜は専務を囲んだ宴会があるかも知れないしな・・・(ここまでスラスラ嘘をつける俺もまだまだ捨てたもんじゃないなあ)・・・」
「会議、会議ってあんたみたいな万年課長代理が参加して何か重大なことでも決まるってのは私には信じられないんだけれど」
「能ある鷹は爪隠すって言うだろう。失われた十年が終わっていよいよ俺の時代が来そうなんだよ・・・(俺もそう信じたいよ)・・・」
「能ある鷹は爪隠す? フン、出る杭は打たれるって言うけれど、へっこんだ杭みたいなあんたがよくそんなことが言えるわね。それに私だってあんたと結婚して失われた三十年を送ってきたわよ」
「おいおい、お前さんの減らず口を聞いている間に時間がなくなったよ。もうそろそろ出かけないと・・・(この家を一歩出さえすれば極楽が待っている)・・・」
「あんた、いつもの挨拶は」
「はいはい。わかりました。ア・ア・ア・ア・アイシテいるよ・・・
(こんな意味もない言葉を俺に毎日言わせて聞き飽きないのかよ)・・・」
「どうしたのあなた、どもったりして。ロレツが廻らなくなったら人間おしまいよ。やっぱり私心配だわ。今日はあんた何か変よ。ねえ、もう一度心をこめて言ってちょうだい」
「わかった。わかった。もう一度言うよ。お前さんのこと死ぬまで愛しているよ。これでいいかなあ・・・(これも今夜のための予行演習だと思えばええか)・・・」
「あんた、外で悪いことをしてもお天道様が見ているわよ。じゃー、行ってらっしゃい」
「行ってくるよ・・・(それにしても最後はお天道様かよ。この女は本当に嫌なやつだなあ。でも夜だったらお天道様も出ていないし大丈夫か)・・・」


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たそがれ親父の人生ノート
「ウーン、何が・・・(ドキッ)・・・」
「朝からソワソワしているのじゃないの」
「おいおい、何考えているんだよ。今日は出社したとたんに会議で、その後も一日中会議の予定だよ。ウキウキしている暇なんてないよ・・・(いつもは寝ぼけた牛のような女なのにこういう時の動物的嗅覚だけは凄いな)・・・」
「あんた、私はソワソワって言ったのよ。ウキウキなんて言っていないわよ。
なおさら怪しいわねえ」
「おいおい、ソワソワもウキウキも大してかわらないだろう。俺は疲れているんだから・・・(本当に油断がならない女だな。刑事になればよかったのに)・・・」
「あらあら、疲れたなんて言いながらそのネクタイどうしたの。私そんな派手なネクタイ買ってあげたからしら」
「いやー、珍しいなあ、お前さんが俺のファッションを気にとめてくれるなんて。本人に忘れられちゃこまるな。昔、誕生日に買ってもらったネクタイだぜ。・・・(どうしたんだ、こんな日に限ってやたら細かいことに気がつくなあ)・・・」
「あんた、もしかしてそれで若作りしたつもりなの。それにファッションセンスが20年は遅れているわね。今時、ストライプのワイシャツに水玉模様のネクタイなんて流行らないわよ」
「ほっとけよ。俺が満足しているんだから・・・(そう言われればそうかもな。しかしこいつは若い連中のレトロ趣味なんて知りゃしないだろう・・・)
「まあ、そんな派手なファッションでも馬子にも衣装っていうから。それに世の中、今はアンティーク趣味っていうのも流行っているからあんたにはお似合いかもしれないわね」
「言うことにこと欠いて、今度はアンティーク趣味かよ。お前さんの憎まれ口にも慣れちゃったけれどな・・・(鋭い! それにしてもこんな若い俺を骨董扱いかよ)・・・」
「それで帰りは何時になるの」
「会議の結果次第だなあ。今日の会議は専務も出席するというから、夜は専務を囲んだ宴会があるかも知れないしな・・・(ここまでスラスラ嘘をつける俺もまだまだ捨てたもんじゃないなあ)・・・」
「会議、会議ってあんたみたいな万年課長代理が参加して何か重大なことでも決まるってのは私には信じられないんだけれど」
「能ある鷹は爪隠すって言うだろう。失われた十年が終わっていよいよ俺の時代が来そうなんだよ・・・(俺もそう信じたいよ)・・・」
「能ある鷹は爪隠す? フン、出る杭は打たれるって言うけれど、へっこんだ杭みたいなあんたがよくそんなことが言えるわね。それに私だってあんたと結婚して失われた三十年を送ってきたわよ」
「おいおい、お前さんの減らず口を聞いている間に時間がなくなったよ。もうそろそろ出かけないと・・・(この家を一歩出さえすれば極楽が待っている)・・・」
「あんた、いつもの挨拶は」
「はいはい。わかりました。ア・ア・ア・ア・アイシテいるよ・・・
(こんな意味もない言葉を俺に毎日言わせて聞き飽きないのかよ)・・・」
「どうしたのあなた、どもったりして。ロレツが廻らなくなったら人間おしまいよ。やっぱり私心配だわ。今日はあんた何か変よ。ねえ、もう一度心をこめて言ってちょうだい」
「わかった。わかった。もう一度言うよ。お前さんのこと死ぬまで愛しているよ。これでいいかなあ・・・(これも今夜のための予行演習だと思えばええか)・・・」
「あんた、外で悪いことをしてもお天道様が見ているわよ。じゃー、行ってらっしゃい」
「行ってくるよ・・・(それにしても最後はお天道様かよ。この女は本当に嫌なやつだなあ。でも夜だったらお天道様も出ていないし大丈夫か)・・・」


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